公益財団法人 小佐野記念財団

第25回最優秀作品(中学生の部)

第25回国際交流・国際理解のための
小中学生による作文コンクール最優秀作品(中学生の部)

「ロシアの友人」

山梨英和中学校 二年 滝沢 史

 私はこの夏、英語を勉強し外国の友達を作るために、イギリスへ短期留学に行きました。そこで一番仲良くなった友達が、ロシア人の同年の女の子です。私はその子に出会うまでロシアという国にあまり良い印象はなく、ロシアの人と友達にはなれない、と思っていました。私が教えられてきた中ではいつも、ロシアが加害者、日本は被害者と決まったように言われてきました。そして私も、素直にそれを信じていました。

 しかしそのロシアの友達は、本当に日本が大好きでよく日本語をしゃべってくれたり、日本の映画などについてもよく話してくれました。私は彼女のように相手の国の言葉が話せないので、ずっと英語で話していましたが、私が「ロシア語を教えて。」と頼むと、快くていねいに教えてくれました。それから私たちは、互いに悩みを相談し合ったり、その日にあった出来事などを話したりしながら、ほとんどの時間をずっと一緒に過ごしていました。

 私はある時彼女に、「どうして日本が好きなの?」と聞いてみました。すると彼女は笑顔で「日本は隣の国でもあるし優しい人が大勢いるから。」と答えてくれました。私が戦争のことを話すと、「それは過去のこと。今はもう戦争はしていない。戦争のことを引きずっている人も多いけど、私は違う。」と強い意志を持って言っていました。そして「Now we are friends」と私に言ってくれました。この言葉は、今でも私の心に残っています。また、彼女は私に小さな木馬の人形をくれました。それはロシア人の手作りで、彼女も大切にしていたものだったそうです。渡してくれる時に、彼女は「理解してくれてありがとう。」と言っていました。彼女と別れる日に見送りに行くと、私を抱きしめて「私たちのように、心の壁を壊せる人がたくさん増えるといいね。」と言ってくれました。

 彼女はロシア人は好きでも、ロシアという国はあまり好きではないと言っていました。ロシア人は多種多様でたくさんの人がいるけれど、ロシアという国は一つしかないのに、あのように意地を張って自分勝手では、ロシアのイメージが悪い国というように一つに決まってしまう、ということが理由だそうです。それに、彼女は日本が好きでも周りの人はそうではなく、彼女が日本語を話すたびに指を差して、彼女に「今、日本語をしゃべった!どういうつもりだ!!」と言うそうです。学校の友達にも、日本の良さを分かってもらえず辛い、と彼女はいつも悩んでいました。

 しかし、それを言うのであれば日本も全く同じではないかと私は思います。私が彼女とこの話をした時、真っ先に浮かんできたことが「北方領土問題」でした。この問題は、未だ解決していません。この原因はきっと、日本の政府や国民、同じくロシアの政府や国民の、資源や漁業に関する権利などの問題から生まれた、過去の心のせいだと思います。私自身も彼女に出会うまでずっと、ロシアは敵だと思っていました。そのように考えてしまっていた理由は、過去の出来事を重要視しすぎてしまっていたからだと思います。私の他にも、ロシアを敵対視している日本人はたくさんいます。このように思う人がたくさんいるのは、ロシアを理解していなかった大人が昔から、「ロシアは間違っている」と子供たちに教えてきたからではないでしょうか。私はこれ以上、ロシアを理解しない日本人が増えてほしくありません。北方領土問題が解決していないのは、多くの日本人が心の中で、ロシアを理解していないせいもあるのです。そうでない人がいたとしても、それはとても大きいものです。そのような視点で教えていった大人は、これからの時代の子供に、ロシアとどう付き合っていけというのでしょうか。ロシアと日本の間に出来てしまった大きな溝を埋めていくのは私たち子供です。過去に、裏切られたり言い争ったりもしてきた相手を理解するのは難しいかもしれません。でも、理解し合わなければ、何も始まらないのです。過去にとらわれず、前を向いて生きていくことの出来る日本人が増えていってほしいです。

 「Now we are friends」この言葉の、意味と重さをロシアと日本の人々に伝えて、理解してもらいたいです。そうすれば、北方領土問題も、お互いをよく考えた解決に近づけると思います。具体的にどうする、というのはまだ分かりませんが、相手をしっかり見て理解し合うことで、必ず良い解決方法が見つかると信じています。

 私は、ロシアと日本の間にある問題を解決し、友好関係を深めて理解し合えるような人間になりたいです。

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