第25回最優秀作品(小学生の部)
第25回国際交流・国際理解のための
小中学生による作文コンクール最優秀作品(小学生の部)
「私の海外体験」
甲府市立池田小学校 六年 池原 名保美
私は今年の夏休みにベルギーに行きました。春休みに受けたコンクールで出会った先生が主催されている十八才以下の子どものための室内楽の講習会と音楽祭に参加することになったからです。ブリュッセルから電車で四十分程のジャンバルという小さな美しい町でその講習会は開かれました。世界中から音楽を学んでいる子ども達が集います。
今まで海外に勉強に行く時はいつも母と一緒でした。でも今回は初めて一人で参加することになったのです。期待もたくさんありましたが、宿泊先に着いて母が帰る時には、不安でいっぱいになり涙が出てきました。少し内気な性格の私は、これからみんなと仲良く過ごせるか心配でした。宿舎に入るとすぐに先生やスタッフの人達、そしてこれから勉強する仲間たちが温かくむかえてくれて、あいさつをし、あく手をかわしました。「どこから来たの?」と聞かれ、「日本からよ」と答えると、すぐさまみんなが自分の知っている日本語や地名を言ったり、日本の事を質問して、コミュニケーションをとろうとしてくれました。私も外国の事を色々質問したり、楽器の話をしたりしているうちに、しだいに私のなかのさみしさや不安が消えていき、心がなごんでいくのを感じました。その時、世界の人たちと交流するのには、難しい言葉を知らなくても、仲良くなりたい気持ちがあればいいのだなと思えました。
私のルームメイトは、チェロのオデリア(ベルギー)、アナベル(ドイツ)、ヴァイオリンのリリア(フランス)の3人です。ユースでは事前に決められたレパートリーを練習し、2週間のレッスンが行われます。連弾、ピアノトリオ、ピアノカルテットなどアンサンブルのメンバーの組み合わせは全て異なります。毎日のレッスンでは、世界各国から集まる先生方が熱心に、そして楽しく指導して下さり、私たちの音楽を素敵に創り変えて下さいます。それはまるで魔法をかけられているようでした。アンサンブルは私にとって初めての経験でしたが、とても楽しく学ぶことができました。
週に一度、日曜日に行われるステューデンツコンサートとハウスコンサートのプログラムを決めるテストがありました。そのテストにむかって、みんな毎日一生懸命練習しました。テストの時は、自分たちを信じて楽しく演奏しようと声をかけ合いました。海外での演奏会出演は、私にとって貴重な経験となりました。
夕食後は、毎晩ドレスやスーツに着がえてコンサートホールで行われるゲストの演奏会を聞きに行きました。みんな、その素晴らしい音楽に夢中になりました。私もいつか、こんなステージで演奏できるようになりたいなと思いました。そのコンサートの中でピアニストの方に花束をわたす係になりました。すてきな思い出です。
私はこの講習会で素晴らしい先生方と仲間達に出会うことができました。みんな、住んでいる国や言葉は違うけれど、大好きな音楽を一緒に学び演奏することで心を伝え合い分かり合うことができました。そこに言葉の壁は感じられませんでした。同じ夢に向かって努力している仲間同志だからこそ分かり合えることもたくさんありました。音楽って楽しい、本当に楽しい。みんなで創り上げた音楽やみんなの声が、今も聞こえてくるようです。
これから先ももっともっと勉強して、世界の色々な国でピアノを演奏できるようになりたいと思いました。ヨーロッパの人たちは、いくつもの言語を相手によって使い分けることができます。私も英語以外の言葉も覚えて、色々な国の人たちと交流できるように、努力していきたいと思います。