公益財団法人 小佐野記念財団

第19回最優秀作品(中学校の部)

第19回国際交流・国際理解のための
小中学生による作文コンクール最優秀作品(中学校の部)

国際交流はまず日本を知ることから

韮崎西中学校3年 笹本 千晶

 奈良・京都。日本を代表する古都である。私は、今年の五月、修学旅行でその街に行ってきた。この修学旅行のために半年ほど前から事前学習を進め、お寺について調べたり、見学コースをつくったりした。事前学習をする中で、はじめて知ったことがたくさんあった。三十三間堂には、千一体もの千手観音があること、二条城のうぐいす張りの廊下のことなど、知らないことがあるほど、修学旅行が楽しみになった。そして修学旅行当日。はじめは、ただお寺を見学するだけなんて楽しいのかな、と思っていた。でも実際に行ってみると、調べたときよりも興味がわいてきて、新しい発見もたくさんあった。東大寺の大仏は、想像していたよりも何倍も大きくて驚いた。二条城のうぐいす張りの床も、金閣寺の美しさも、竜安寺の石庭も、実際に見たからそのすごさがわかったし、感動した。三十三間堂の仏像の一つ一つの違いも、清水寺の舞台からの絶景も、この目で見てきて改めて新たな発見があった。この三日間で、この日本の古都の美しさ、すばらしさがたくさん学べた。とても充実した修学旅行だった。

 そして旅行の興奮も冷めやらぬ次の週。私は英会話教室のジョン先生に、さっそくその事を話した。ジョン先生は近所に住んでいるお姉さんの夫で、そのお姉さんの実家を使い、夫婦で英会話教室を開いている。私はそこへ通っているのだ。奈良、京都の話をしたら、きっとジョン先生は喜んでくれるだろうと思って、私はできる限りの英単語を並べて、一生懸命説明した。一通り話し終わって、ジョン先生の様子をうかがうと、先生は、「僕は京都に三回行ったことがあるよ。」と言った。びっくりしたのと同時に、悔しかった。せっかくもっと驚いてくれると思ったのに…。そう思った。そうはいってもあきらめきれなかった私は、まだまだ先生の知らないことがあるだろうと思って、思いついたことをとりあえず言ってみたが、先生はあまり驚いてくれなかった。私は、少しショックだった。「チアキ、知ってる?京都御所は、中に三つの御所があって、三つを合わせて京都御所って言うんだよ。」ジョン先生は、さらにそう言った。私はあれだけ事前学習をしたのに、そんなこと全然知らなかったことに、しかもそれをアメリカ人のジョン先生に教えられたことに、私は大きな衝撃を受けた。私は、日本人なのに。本当は、私が教えてあげるべきなのに…。私は自分のふがいなさに少し落ち込んだ。聞いてみると先生は、日本の歴史はおもしろい、そう思い、自ら歴史の本を読んだりして調べたり、実際に京都へ行ったらしい。そういえばこの間も、テレビ番組で、日本人の妻をもつ外国人が、日本語の不思議やおもしろさを紹介していた。彼もまた、日本語に興味を持ち、自分で研究したそうだ。

 それに比べて私たち日本人はどうだろうか。日本語をおもしろいと思ったことなどあるだろうか。歴史なんて、私にしてみれば、覚えることばかりのやっかいな教科にすぎない。修学旅行という機会がなければ、奈良・京都について調べることなんて、一生ないかもしれない。実際調べてみても、知ることができるのはほんの一部だけだ。日本のことさえもまだまだ知らないのに、私たちは外国のことを知りたがろうとする。たしかに、これからの時代、他の国のことを知り、たくさんの言葉を話すことが重要になってくるかも知れない。しかし、日本語を正しく使えなければ、外国語はわからないし、それと同じように、日本のことは知らないことだらけなのに、外国のことばかり勉強することが、はたして重要なのだろうか。

 私は、外国のことをどれだけ知っていても、私のように外国人から日本の歴史を教えられるようでは、本当の国際理解とは言えないと思う。外国の文化や歴史も、日本と比較しながら、ここが日本とは違う、とか、そのとき日本ではこんなことが起きていた、とか、そう考えることで、日本についてもその国についても、新しい発見やおもしろさが生まれるのではないだろうか。

 私たち日本人は、もっともっと日本について知り、この国の美しさを、世界に自慢できるようになるべきだと私は思う。そして、日本を知った上で、積極的に外国について勉強していくことが、真の国際交流につながるのではないだろうか。

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