公益財団法人 小佐野記念財団

第22回最優秀作品(中学校の部)

第22回国際交流・国際理解のための
小中学生による作文コンクール最優秀作品(中学生の部)

「国際理解の第一歩」

韮崎市立韮崎西中学校 三年 野沢 佳那

 私は、最近インターネットの掲示板で信じられない書き込みを見た。書き込みの内容は日本以外のアジア人に対する差別。いわゆる人種差別だった。そこには数多くの暴言や差別用語が書かれており、私には許せないという怒りと不快感だけが残った。

私の家の隣は、カメラの部品などを造る町工場だ。日本人だけでなく中国や東南アジアなどの色々な国々の人が深夜遅くまで働いている。多国籍の従業員達が協力して成り立っている工場なのである。私の祖母も退職するまでその工場で働いて、よく「外国から来た○○さんは本当によく働くし、本当に立派だね。」と私に話してくれた。祖母の言っていた通り本当に彼らは立派な人達だと私は思う。私が登下校中などに彼らに会ってあいさつをすると、彼らは嬉しそうにつたない日本語で返してくれる。そうすると私も嬉しくなって「今日も頑張ろう」と思える。彼らは、遠い異国へ一人でやって来たのだ。家族や友達もいない国で毎日朝から晩まで働くなんて、私には決して出来ない事だと思う。だからつたない日本語であいさつを返してくれる彼らを見ると、「頑張れ」と思い、自分も頑張ろうと思えるのだ。他人にも元気をくれる彼らは本当に立派だ。その事を掲示板に差別的書き込みをした人達は知っているのだろうか。彼らは人々の内面ではなく外見や国籍でしか人を判断出来ないのではないかと私は思う。何故差別をするのだろうか。

私は周りの人々に意見を聞いてみた。私は今、世界中の人々とメール交換をしている。相手の国の文化や流行など色々な事が分かるし、何より友達として世界中の人と意見交換出来る。いつも相手からのメールが待ち遠しい位だ。私は韓国人の柳とイタリア人のアンドレアに私の「差別」に対する意見についてどう思うか、そして自分は「差別」についてどう思うか聞いてみた。柳は「佳那の意見は僕も最近そういう事があってとても共感できる。表面的には差別はない様に見えても実際は人々の心の奥底には意識は根づいていると僕は思う。実は、僕も日本語を勉強していく前は日本に対して偏見の目で見ていた。昔学校であまり日本のことをよくなく習っていたんだ。だから日本人は皆心無い人間なんだと思ってた。「差別は」その国の歴史にも多く関係がある。人々はまだ戦争の事が忘れられないんだ。」と自分も昔は差別をしていた事を教えてくれた。アンドレアも「佳那の意見には同意する。イタリアでも差別はあるんだ。例えばイタリアは元々南北で別れていたから、北部と南部どちらかの出身かによって差別をしたり、観光客のアジア人に向かって暴言を吐いたり唾を飛ばしたりする事もよくある。私は差別はしないけれど、親戚の中にはそういう考えの人もいる。「差別」は一個人というより大衆化されていると私は思う。」とイタリアでの差別や親戚に差別をしている人がいるという事を教えてくれた。やはり差別には、国の歴史や大衆の考えが大きく関係しているのではないかと私は思った。それは、「戦争」ではないだろうか。

アンドレアの様に私の親族でも人種差別的な考えを持つ人がいた。曾祖母だ。彼女は私が産まれる前に亡くなった。この話は母から聞いた事だが、彼女は大のソ連嫌いだった。不幸な事が起きると「ソ連軍の陰謀だ。」と騒いでいたらしい。彼女は太平洋戦争末期の日本に終戦数日前になって参戦してきたソ連が許せなかったのだ。やはり「戦争」とは、人々の記憶にいつまでも残る嫌な思い出であり、一生忘れられないのだと思った。結局、彼女は最後までソ連嫌いだったらしい。人の人生や考え方まで変えてしまう出来事なのだ。死者だけでなく生き残った者の心に「差別」というものまでも生み今も人々の心の中にいるのだ。

その後またメールをした時、柳に「韓国人と日本人が同じ話題で盛り上がる。約七十年前では考えられなかった。そんな事が起きるなんて本当に平和だ。これが真の国際理解だね。」と言われた。私もその通りだと思った。

戦争は未だ人々の心に残っているし、人の考えは簡単に変えられない。だが、戦争を体験していない私達だからこそ戦争を理解し、戦争による差別を無くすべきであると私は思う。一人一人が理解しなくては互いが認め合い協力する社会は築けない。自分の「差別」という心の壁を壊すことで世界の人々と分かりあえることができるはずだ。まず自分の心を変えることが国際理解の第一歩なのではないか。私は、周りの人の感情に振り回されることなく自分の考えを信じて行動していきたいと思う。お互いを認めあい、助け合うこと、これこそが国際理解を支える土台ではないのだろうか。

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